タイの恋の話

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タイのナントカという町はハジャイのことです。 ハジャイには遊びの少ないイスラム圏の国から人が流れてきて活気があると聞き興味があったわけです。 ハジャイに向かった理由はもう一つあって、それは下らない理由だけど、耳かきです。 耳かきを使うという習慣は日本と中国にしかなくて、タイに耳掻きは売っていません。タイで一番規模の大きい中華街があるハジャイなら耳かきあるかもなあ?と考えたためです。 僕は耳かき中毒であるにもかかわらず、来泰の際、耳かきを日本から持参するのを忘れてしまったのでした。 綿棒やマッチ棒を使って、この場をなんとか凌ごうか。とも思ったのですが、いやマテヨ、耳かきのあのコリッとした心地良さ、アレを綿棒やマッチ棒ごときで代用して台無しにしていいものか?いや、いいはずあるまい。 と頑なに、代用品の使用を拒否し続けていたのでした。 そして、ハジャイのマーケットで銀色に輝く耳かきを発見した時の興奮とヨロコビ。想像できますか? ちょっと形が変だけど、値段交渉もそこそこにほぼ言い値で買って、ホテルへいそいそと戻ったのは昼下がりの午後4時10分のことでした。 満面に笑みを浮かべていたかも知れません。気持ち悪い人だったかも知れません。 部屋に戻り気持ちを落ち着かせ、そして第一掻き。コリッといくはずが、ガツンと言う手応え…。 こ、これは…? ガッツリした抵抗を振り切り、思い切ってそのまま外まで掻き出してみるとゴボッと言う音と共にハンパない大きさのドーナッツ状の耳垢が! いやあ、ほんとに感動しました。そして気持ちよかったなあ。これまでの人生の中で一番気持ちよかったと思う。あの時は……うんうん。
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