タイの恋の話

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タイでは親しくなるとニックネームで呼び合うのが普通で、その娘のニックネームはアリャだった。 意味は鹿らしい。 よく、日本の女の子でも、自分のことを呼ぶ時に「私」でなく名前を呼ぶ娘がいるけど、アリャもそういうタイプの娘だった。 「佳菜子ね。あのね。」みたいな。 だから、会話の中に時々アリャが入ってくるのだが、それが日本語の「ありゃ?」に聞こえ、可笑しくて仕方なかった。 一人、堪え切れず笑ってしまうと、アリャも嬉しそうにしているのでした。 で、このアリャというニックネームですが、鹿だと教えてもらったんですが、検索して調べてみると、どうもそうではない。 ありゃ? アリャって一体なんじゃろ? どなたかタイ語に詳しい方がいらっしゃったら教えて下さい。 まあ、それはともかく、アリャに「あなたのニックネームは?」と聞かれ、ニックネームのない僕は当時流行っていた日本のアニメ「クレヨンしんちゃん」のしんちゃんだよ。と答えた。 アリャは手を叩いて喜び僕のことを「チンチャ!」と呼ぶようになった。 発音が微妙に違うんですね。 しかし、「チンチャチンチャ」って連呼されると意味もビミョーだなあ。と、こちらも僕の笑いのツボにハマってしまうのでした。 辞書を片手に話しするのはじれったいけど、二人椅子に座り、長いことアリャと向き合っていられることが嬉しかった。 田舎から出稼ぎに来ていたアリャのアパートは貧しくて、痛々しい感じがしました。 貧しいアパートで、二人寄り添って仰向けになり、辞書の両端を持ち合ってお話しするのは僕には至福の時でした。 ほんの2~3日のつもりが、僕のハジャイでの滞在は伸びに伸びていくのでした。 しかし、労働許可を取らずに、三ヶ月毎の出入国を繰り返していた僕には、そろそろ期限が迫っていました。
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