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side美奈
甘い吐息が頬に掛かる
ネイルサロンに行ったばかりの綺麗な彼女の爪が私の肩に食い込んでいる
その痛みさえ甘く、切なく私に刻み込まれていく
柔らかな唇が触れる
優しく絡めた舌が私を溶かして、脳が痺れる
尾てい骨の辺りがジンジンと疼き出したら、とろりと舌が去っていった
私たちが、こんな事を始めたのはいつだっただろう
お互いが初恋だった私たちは、男なんていらなかった
こんな事がいつまでも続く訳がないことは知っていて、だけどお互いを無くす事を酷く恐れる私たちは依存の底をさ迷っていた
けれど、こんな事が、今日、終わる
彼女はキスの余韻か、感情的なものなのか、分からないような切ない目で私に向けて言葉を紡ぐ
「美奈、あたし…」
私は遮るように、おめでとう、と笑った
2人の視線がキスみたいに絡んで、切ない笑顔から涙が落ちる
彼女は一瞬俯いた後、美奈もね、と愛らしい笑顔をくれた
潤んだ瞳と、頬に残したままの涙の痕が、切ない程、美しい
朝が来たら、私たちは二度と会えない
もしも、どちらかが男なら離れなくて良かったのに、どうして、愛する事に制限があるのだろう
こんなに想っても、どうして、ただ寄り添って生きていけないのだろう
私たちは女だった
悔しいくらい愛していても、間違いなんだそうだ
朝が来るまで私たちは愛してると繰り返した
2人にしか聞こえないような小さな声で、体を寄せて抱き合っていた
キスをして、少し泣いて、瞼にまたキスをした
それは、とても寒い日で、ストーブのオレンジが揺れていた
窓の外で降る雪には、朝まで気付かないだろう
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