プロローグ

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「良いかい陽向(ひなた)、お前は普通に生きるんだぞ……」 広くもなく狭くもない和室、大きくもなく小さくもない家、特別なんて程遠くどこにでもありふれる家系での事。 僕の爺さんはそんな事を言ってこの世を去ったのだ。享年58歳、死因は過労だった気がするが何分10年前の事だから覚えていない。 いや、過労死以外の何物でもないだろう。 会社では中間管理職で社蓄のように働かされ、プライベートでも自治会長や町内会長、果ては市長から大使を任命されるなどとにかく役職を兼任し過ぎた人だった。プライベートの時間は限り無くゼロ、フルストレスの毎日だっただろう。 亡くなった爺さんに皆は口を揃えて言う「あぁ負担を掛けすぎていたな」と。判りきっていた事をどうして後から気付いたように言う。 それが許せなかったのを覚えている。頼りきった挙げ句に彼らは、アイツらは僕の大好きな爺さんを奪ったのだと。幼いながら沸々と怒りが生まれていた。 だから僕は、爺さんが亡くなった日に誓った。過労死させられた爺さんの最後の言葉を守るのだと、普通の生涯を送って天寿を全うしてやろうと。 しかし無情にも高校3年生の春、厄介事はインターホンを押してやって来やがった。
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