《第一章》

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確かに、俺の方が航平の食べたカツカレーより2倍の値段だな。 それでも…。航平の前にあるものをプラスしたら確実に、お前の方が高いだろ……。 俺が今飲んでいるコーヒーだって別に頼む気無かった俺を巻き添えにしてまで頼んだ、その二人分のケーキセット……。 「一人分で良いだろ」 と言う俺に 「俺一人だけケーキセット注文したら恥ずかしいだろ」 と言って、二人分注文した航平……いや、俺は、男が二人してケーキセット注文して食べている方が、よっぽど恥ずかしい気がする…。実際、お前がケーキの種類を選べなくて二人分食べたかっただけだろ。 航平は文句をいいながら…。 「みこちゃんに、言いつけてやる~!」 とか、なんとか…結局、支払いを済ませると、航平は1日だけの出張でここへ来ていたので帰って行った。 気になっている事の1つは、航平の事で……あいつに聞こうと思ったが、聞けなくて…「みこと元気にしてた?」なんて、訳分からん事を言ってしまった。 あと1つは、俺が出張でここへ来て1週間が過ぎた頃、いつもの様に夜、みことから電話がきて話していたら「明日も葵達と夕飯食べに行くのか?」 俺が出張で、みこと一人だからと葵達が夕飯を一緒に食べにいったりマンションに泊まりに来てくれると話していたので聴いてみたら…。 「いえ、明日は…えっと、前に働いていた喫茶店へ久しぶりに行こうかと思っていて、あ、結婚の報告もしたくて…」 みことは結婚の報告にと嬉しそうに話していた。 お世話になった人達だという事も聴いていたし、みことは本当にその人達の事が好きなのだろう……。俺の知らない、みことが過ごした場所…それに…。 その場所は…前の旦那と知り合て、過ごした場所でもあるんだよな……。あれから、みことは仕事が早く終わる日は、そこへ遊びに行っているのだと嬉しそうに話していた。 俺の胸は…ギューーと、誰かに握り潰されているような、痛みなのか何なのか、もう自分でもよく分からない…。 みこと…早くお前に逢いたい。
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