《第一章》

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私がアパートの階段を降りきるのと同時に、鷹矢さんが携帯に出た。 私は鷹矢さんが話しだすよりも先に、息を切らしながら話しだした。 「鷹矢さん! あのね私……キヤッ!?」 階段を降りた私は、そのまま走りながら鷹矢さんに話しかけ【大通りのコンビニの前で待ってます】そう伝えるつもりだった…。 でも…。走っている私は突然腕を掴まれた。 後ろへ私を引寄せ、そのまま抱き締めているこの人は…。 振り向いて誰なのか確めなくても解る人で…。 私を抱き締めるその手に…、携帯を握り締めているこの人は…私の一番逢いたかった人だから…。 「みこと…。そんなに急いで、今度は何処に行くつもりだ…。」 抱き締めたまま私の耳元で囁くその声を聴いて、何故だか泣いてしまいそうだった――だから、すぐに返事が出来ずに黙っている私にまた、優しく問いかける。 「みこと…。アイツ誰?ここで風呂入って…アイツと……、ここで何してたんだよ…。」 ゆっくり話しながら、私を抱き締める腕にさっきよりも強く抱き締められて…。私の背中から伝わってくる鼓動が、さっきよりも速く感じる…。 私は…。抱き締められて安心したのか、さっきより落ち着いてきた。 ……ん?あれ…。 【アイツ】は…私の携帯に出た【コウ】の事だよね? 【ここで風呂】は…? …何でお風呂?
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