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「……。」
あれから、鷹矢さんはずっと黙ったまま車を運転している。
コウの顔を見た鷹矢さんは…きっと頭が真っ白で、弥生さんの言っていた事も上の空だったと思う。
弥生さんはコウに、私の荷物を取ってくる様に言うと──
「何でだよ。帰るならオッサン1人でかえっ…!?」
弥生さんに睨まれて…コウはブツブツ文句を言いながら歩きだしたので、直ぐに私もコウの後を追いかけ様としたけど…。鷹矢さんにまだ抱き締められたままで…、その手をほどこうとすると…更にギュッ…。
コウがアパートの方へ歩いて行くのを見届けた弥生さんは、溜め息をついて私達の方へ振り向いた。
「は~、まさか三浦くんにばれちゃうとは思わなかったなぁ…。でも、ほら、今更…ね。“あの大きな子が貴方の子なのよ”なんて言う気は全然無いのよ。だから本当気にしないでね。あ、でも1つだけ、みこちゃんにお願いが…、コウヤは、みこちゃんの事大好きだから会いに来てあげてほしいの。じゃないと、あの子…うるさくて…。」
そんなふうに言って弥生さんは笑っていたけれど…。
その後コウが私の荷物と…大きなケーキの箱を1つ持って戻ってきた。
「みこと…。オレとの約束…忘れてないよね?」
「コウヤ、みこちゃんと何の約束したの?」
「教えない…。オレと、みこと二人のヒミツだから」
私はコウに笑いながら頷いて…。鷹矢さんを見ると、やっぱりコウの事をジーーと見ていた。
なんだか、このまま鷹矢さんに車の運転をさせるのは危険な様な気がして…。
「あの…。鷹矢さん、私が車の運転…」
「…いや、みことが運転する方が落ち着かない」
……あれ?鷹矢さん…まだ頭が真っ白になっていると思ったのに…。ちゃんと話し聞いてたんだ…。
そんなやり取りをして今に至っている訳なんだけど…。
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