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…それは…そんな事は、初めから解ってた事じゃないか、と…部外者だけど俺の胸が苦しくなった。
航平は、ただ黙ったまま弥生さんの話しを悲しそうな目で見ているだけだった。
──弥生さんが帰った後
まだ動けずにいる航平の向かい側に俺が座ったのを見て…
…泣きそうな顔してるくせに…。
「ははッ。はぁ~完全に振られた~」
そう言って笑う航平。
「……ここ、ケーキが旨いらしいぞ。相澤さんがこの前言ってた…食うか?」
「…相澤…あ~あの子か。…鷹矢が奢ってくれるなら」
「……ああ。」
「……。」
俺がメニュー表を航平に差し出すと…
机に左手で、頬杖をついていた航平は…
俯いて、その手で目元を隠すように押さえ──反対の手をグッと強く握り締めた。
俺は、航平から視線を窓の外へと移した。
「…っ…本当…ダメだよな俺…。
ありがとうって…今まで楽しかった…て、その人の事…頑張れって…言ってあげれなか…た…っ…笑わせてあげれなかった……ッ」
──なぁ、航平…。
弥生さんも…本当はお前の事
まだ好きなんじゃないのか…?
弥生さんの本当の気持ちは解らないけれど…なぜか…
弥生さんが、最後に言った
「──ごめんね。
──大学…ちゃんと頑張って…」
そう言った弥生さんの手が…
膝の上に置かれていた彼女の手も
今の、お前と同じ様にグッて…強く握り締めたんだよ…。
──
「ふふ。見て鷹矢、何だか前の二人可愛いわね。高校生のカップルみたい…あ!昔の、航平と弥生みたいね」
「………。」
急に薫さんに話し掛けられて、曖昧に笑い返して、前から歩く二人へと視線をむける。
二人でなにやら楽しそうに喋って…みことの頭へとコウが自分の帽子を被せた…。
二人で笑いあって…手を繋いだ。
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