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「航平さん、私は向こうの方へ行ってますね」
一度、航平さんへ振り向いて声を掛けた、けれど。
ドアの方へと視線を向けたまま航平さんは動けなくなってしまったようだ。
私は、そのまま入口のドアの前で立ち竦んだままの人物の前まで歩みより、そのままドアノブへと手を──
……手を…掴まれた…。
「………」
「…み、みこちゃん!?えっ?は!!」
「…みこちゃん…」
二人が、ほぼ同じに声をあげたので思わず笑みが零れてしまった。
「…フフッ。航平さん?…夢、じゃなかった…ですね。それから…弥生さん…」
航平さんに声を掛けてから…弥生さんに掴まれた手をゆっくりとといて、弥生さんを見ると…今にも泣き出してしまいそうな顔で私を見ている。
…初めて見た弥生さんのその表情が、何だか可愛くて思わず─ギュッ。
抱き締めて…
…ううん…弥生さんより小さな私は…抱きついた、と言う方が正しいのかも知れない。
それから、弥生さんにだけ聴こえるように小さな声で─
「弥生さん…きっと大丈夫」
もっと…言ってあげたいのに…。
私には、それ以外の言葉が浮かばなくて。
すると──
弥生さんがギュッーーて、抱き締め返してくれた。
「………あ、あの~……」
「「ぷっ。」」
二人が抱き締め合ったままでいると航平さんの“?”と言う言い方の声を聞いて、私と弥生さんは二人で笑ってしまった。
笑ったお陰で、弥生さんは先程の泣き出してしまいそうな表情から、いつもの明るい表情に戻っていて、二人で頷き合って、私は今度こそ部屋を後にした。
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