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フッ…また、そんなふうに真っ赤になって困った顔をする…。
……そんな顔をされたら押し倒したくなるのに。
みことの腰に廻している腕はそのままで、もう片方の手を、みことへと伸ばすとビクッと肩が少しだけ動く。
「…ぁ…っ」
──パサッ…
みことが被ったままのコウの帽子を外して──
みことに視線を戻すと…俺と目が合っただけなのに…また小さく肩をビクッと揺らす。
……。
フッ…まったく…。
俺の奥さんは…、1ヶ月の出張で逢わないとこんなにもビクビク……いや…違うな…。
昨晩、みことは『ドキドキ…し過ぎて─』…そんな事を言っていたな。
──それなら…ずっと…ドキドキして俺の事だけ考えてろよ──
「みことキ─」
「で、でも…人が…」
と、俺の言葉を遮って段々と声が小さくなっていく、みことから少しだけ視線を逸らした。
屋台村の方と比べるとだいぶ人がいなくて静かな場所なのだが…。
…ま、たしかに。
みことが気になっているのは俺と、みことが居るベンチと等間隔で少し離れた場所にもいくつかベンチがあって、確か…カップルや友達同士なのかグループの様な人達がいたな。
… “あっち”はたいして俺らを気にしていないだろ。
…フッ…。
みことから……“こっち”側が見えなくてよかった。
さっきから…。俺が、みことを引き寄せてからずっと…俺の視界に入る向かい側のベンチに座っている高校生くらいのカップルだろうか…。
恥ずかしそうにしながらも、こちらが気になって仕方がないのだろう…。二人して…少し赤く見えるその顔でこちらをチラチラ見ている。
「みこと…誰も見てないよ。…でも…」
「…で、でも?」
「早くキスしてくれないと誰かに…気付かれるかも知れないけど」
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