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みことから少しだけ体を離して、自分の携帯の画面を確認して電話に出た。
それを黙って見ていた、みことに『電話鳴ってる』と、口だけを動かして視線をみことのカバンに向けると─ハッと、自分の携帯もなりっぱなしだった事を思いだして慌てて電話に出た。
フッ…と、自分の口元が緩むのが分かった。
真っ赤な顔で俺をチラチラ見て電話の向こうのヤツと話している、みこと。
俺が笑った事に気付いたのだろう…。
拗ねた様な顔で俺を睨み付けている。
──先程
俺の携帯まで振動を始めてしまったら、みことが慌てて俺から体を離そうとした。だから。
腰に廻していた腕で、そのまま自分の脚の上へと抱上げて座らせた。
本当なら、抗議をしたい所だろうが…。
あいにく、すぐに携帯に俺が出てしまったので…どうにかもがいて、みことの腰に廻している俺の腕をほどいて抜け出ようと、携帯を持つ逆の手で必死に頑張っているようだ。
「──。みこと、それ、コウから?」
俺に急に声を掛けられビクッと、みことの肩が跳ねた。
驚いた顔で俺を見てコクコクと頭を縦に振るのを見て、みことの耳に充てたままの、その携帯を『ちょっと貸して』と、一応声を掛けながら取り上げた。
「コウか?悪い─」
『おい!オッサン何処にいるんだよ!てか、電話でろよ!』
フッ…やっぱり、最初に振動をしたのはコウからだったのか、と──
「ははっ。悪い気づかなかった」
俺が笑った事にムッとしたのだろうコウは『ふざけんなよ!わざとだろ~!』と、
喚(わめ)いている…。
携帯を耳から1度はなしてコウが少しだけ落ち着くのを待ってから。
「コウ…悪いな…航平と弥生さんの所に戻るぞ。…ああ…」
俺の声音が先程と違う事に気付いたのか『うん、分かった。すぐそっちに向かう』と返事が返ってきた。
フッ…頭のいい子みたいだぞ?航平…お前の息子は─
先程でた俺の電話──
『鷹矢、悪い…今いいか?』
電話口から聴こえてきた優心の声。
「ああ。」と短く返事をすると。
『航平が倒れた。取り敢えず、さっきいたカフェの所まで、すぐ戻って来れるか?…あぁ。分かったまた連絡する』
優心にすぐ向かうと告げ電話を切って、コウには──航平が倒れた事は伏せたまま、戻る事を伝えた。
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