ただの落書き

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次の火曜日。 私の気分はかなり落ちていた。 昨日、コンビニに行ってお財布を開けたら、いつもお財布につけていたお気に入りのキーホルダーが知らぬ間にどこかに落としてしまったようだ。 その上、今日は大嫌いな英語。 テンションが上がるはずがない。 そのせいなのか、いつもの渡り廊下を通るときは本当に無心で、いつもうるさいと感じる大きな声も、群がる上級生たちも何も感じなかった。 授業中も、特に真面目に過ごすわけでもなく、机にそのキーホルダの絵を描いていた。 あーあ、お気に入りだったのにな。 なんて考えながら、我ながら上手に描けたな、なんて少し満足してみたり。 そして、やはり例の落書きには返信があった。 [こらー、ちゃんと授業うけんかーーーーーぃ] きっと烏野先生の口真似なのだろう。 口元を緩ませながら[そっちもなーーーーーぃ]と返事を書いた。 同じように、キーホルダーの絵の下にも[くまちゃん、戻ってこーーーーーぃ]と祈るように書いた。
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