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ああ…今日もいる。
私は右手に持った教科書とノートと筆箱をぎゅっと強く握りしめて早足でそこを立ち去る。
「お前、マジでキモいってー!!」
「ウケるわー!!」
高らかに笑う声は別に私に向けられたものじゃないんだけど、なぜか自分が笑われているのではないのかと考えてしまい、うつむき、なぜか息を止めながら立ち去る。
毎週毎週…こんな授業なくなってしまえ。
「…だからー、このitが指すものはー………」
これまた運良く窓際の一番後ろの席をゲット出来た。
風があたって気持ちいいし、冬になっても日差しがあるから快適だ。
そして、この席には私の密かな楽しみがある。
それは、机の隅に書かれた落書き。
[ねむい][わけわからん][ハゲ]とか、誰かの歌の歌詞とか。
毎週毎週増えていく。
今日は………生徒指導の烏野先生の似顔絵なのだろうか、イカツイ顔のオジサンの絵の下に[カラス]と書かれている。
烏野先生の顔をハッキリ思い出せない私は、今日の落書きに飽きて窓から見える本校舎を眺めていた。
1年から3年の教室が全部見渡せる。
遅刻してきた人も分かるし、先生が廊下で携帯触ってるのもわかる。
その時、職員室からたまたまジャージ姿の烏野先生が出てきた。
実際の烏野先生はもう少し柔らかい表情をしてるし、そんなにシワなんてないし、眉毛も目もつり上がってない。
でも、雰囲気は似てる。
何故かおかしくなって、口元を手で抑えながら小さく笑った。
「こらー、小笠原ーー。窓の方ばっか見てないでちゃんと授業聞けーー。」
「…はい」
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