ただの落書き

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あー、お腹減った。 そんなことを考えながら、彼らの荷物を踏まないように慎重に渡り廊下を通る。 正直、ほんとに迷惑なんだけどなー。 ビビりな私は心の中で思うだけで、視線で訴えるわけでもなく、怒りを露にするわけでもなく、ただ見て見ぬふりをしながら通りすぎる。 「おい、お前ら邪魔ー!」 背後から声が聞こえ、私が通行の妨げになっているのかと思い、反射的に振り返る。 私のすぐ後ろには、ごみ捨ての所で会ったあの大きな男の人だった………たぶん。 顔はハッキリ見ていなかったからわからないけど、声とかピアスとか、あの人のような気がする。 「もー、どけてどけて!こんな広げんなっていつも言ってんじゃん!」 そう言いながら渡り廊下に散りばめられたカバンや荷物を端に寄せていく。 「出たー、和田オカンー!」 「どーせなら、オトンって言えよ!」 和田…そう言えば、烏野先生も「和田」って言ってたような… 本当は振り返ってもっとマジマジと見ていたかった。 が、恐怖心に負け、足早にその場を立ち去った。 あんなヤンチャグループの中にも、注意する人はいるんだなー。
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