ただの落書き

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「でもさあ、あの軍団の先輩たちって、皆カッコいいよねー。目立ってるからってのもあるかもしれないけど。」 「そんな、全員の顔なんて見れる余裕ないよ!」 「はは!まあ、そりゃそうだ!あんたいっつも早足で通りすぎてるから!」 芽衣は笑いながら自動販売機に小銭を入れる。 芽衣は恋愛の話に関して情報がかなり早いし、誰よりも早く情報を入手してくる。 誰がかっこよくて人気があるとか、誰が可愛くて告白されたらしいとか、あの人とあの人は先月から付き合ってるとか。 こんな話をしているときの彼女の表情はどんな時よりも輝いている。 反対に、私はそういう類の話には全く興味がない。 周りに流されて、その本人のことをかっこいいとか可愛いとか、全く感じない。 「あ、そうだ、あのね、今の英語の席にさあ、すごい面白い落書きあるんだ!」 そう言いながら私は財布を開く。 あ、小銭、昨日使っちゃったのか。 「落書き?どんなの?」 「あのね、烏野先生の似顔絵が書いてあるんだけどねー、」 「烏野先生ってどんな人だっけ?」 「ほら、いつも前に立って怒る人。こんな顔したさあ!」 私はお札を手探りで1枚抜きながら芽衣に烏野先生の顔真似をしてみせた。
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