第一章

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重い。 ママが「じゃあ、気をつけてね」と消えた途端に後悔に似た何かと、腕がもげるほどの重みが襲いかかってきた。 その重さがさらにさらにと増して行く。 特にさっき列車を降りて人ごみを見た時に急激に増した気がする。 私はずり落ちて行くボストンバッグをもう一度肩に掛け直すと、慣れないスーツケースを懸命に押した。スーツケースは小さな段差にすらもすぐに蹴躓いては止まってしまう。無理やりに押してもなかなか段差を超えてはくれないし、正直うんざりとしてきた。 憧れの学園入学のためじゃないか!と思っても、昨日までのあの浮かれた気持ちが蜃気楼のように霞んで、不安が台風の日の空のように怪しく暗く影を落とす。 今はきっと台風の目にいるからわからないだけで、寄宿舎につく頃には私はきっと台風の直撃を受けて泣きかけているに違いない。 おまけに寄宿舎は二人で一部屋だから、思う存分泣く場所すらないのだ。 そう思うと、もはや泣きそうな気分だった。
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