※拓斗※

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「俺...お前のこと今まで一回も、“友達”だって思ったことないから」 そう言って、オレから目をそらす光哉。 一瞬、嫌われたのかと思ったそのセリフだったが、頬を真っ赤に染めた彼を見て、そうではないことを本能的に察した。 ・・・なんで 頭の中が真っ白になって言葉が出てこない。 口の中がカラカラだ。 「っ、きもいよな。ごめん」 下を向いた、光哉の顔が見えない。 どんな顔をして、この言葉をいったのだろう。 その言葉と、まだ状況を理解できていないオレを残し、光哉はタッと走り出した。 ドッドッドッドッド 自分の心臓がやけに活発に働いている。 顔が、体が火照っている。 いつから・・・いつからだ、光哉がオレのことを好きだったのは? 思い返してみる。 オレ、鈴木拓斗と高峰光哉は生まれた時からの幼馴染だった。 親同士が仲がよく、家もお隣さん。 学力はほぼ同じ、運動神経もどちらもそこそこ。 おまけに誕生日も一緒。 でも、そんな2人でも1つだけ違うことがあった。 それは、小学校に入って初めてのバレンタインではっきりと証明された。 光哉のもらったチョコは、合わせて32個。 オレはおばあちゃんとお母さんから、2個。 ほらね? 光哉はいつでも女の子に人気があった。 クラスの男子に妬まれるくらい。 もちろん、オレもそのうちの一人だった。 でも、彼女がいたという話は一度も聞いたことがない。 告白されても、いつもご丁寧に断っているらしい。 オレはいつもそれが不思議でならなかった。 でも、その謎も今解けたわけだ。 そんな昔から、女に興味がなかった訳が。 『オレのことが好きだったから』 ...ボッ 顔が一気に熱くなった。 何考えてんだ、オレ。 でもそんなに昔から、オレのこと好きだったら... もし、そうだったら... 光哉は16年も片思い? 今オレは、やっと光哉がオレに言った言葉の重さを実感した。 16年分の想い。 どうやらオレには、とんでもない大きな悩み事が1つ増えたようだ。
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