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彼には婚約者候補なんて山ほど居る。
その候補に父と母は姉の蕾を出さないのには姉には自由な恋愛をって意味らしい。
でも、父と母は七海病院を大きくしたい。そのためには神崎病院との完璧な繋がりが欲しい。
言ってしまえば、血が繋がってない娘を差し出して、病院安泰を願ってるって事。
そして同時に私はノーとは言えない。
それは私を育ててくれたご恩があるから、実の所私には幼き記憶がない。でもまさか、二人の娘じゃないとは思わなかった。
「いいね。結花。君は私達の為にその身を削って彼に取り入りなさい。他の候補者に負けては帰る場所はないと思いなさい」
昨日まで優しかった父はもう居ない。野心は人を変えてしまうものなのかも知れない。
車が停車し降りた私が目にしたのは、あの有名な著名人多数訪れるというホテルであった。
身を削ってって恋愛初心者で敏感体質の私に何をさせる気って思ったけど、同時に何も知らないまま、追い出されるわけには行かなかった。
父と母が違うのなら、私はまだ見ぬ母と父を知りたいと思った。
そのためには彼らの願いを叶える必要がある。多分今のままでは話してもくれないだろう。世間に騒がられては傷がつくから。
私もまた従順な性格にヒビが入ってしまったようだ。それとも本来の私なのか……
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