Memory.1 ハジマリ

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「アメリカで引退したオヤジが、どうしても跡取(あとと)りは男でなければとゴネててな。」 「やっぱり、私が子供を産めなくなったのが、ショックだったのかしら?」 「いや。蒔宮家は代々、あの病院を継ぐのは男と決まっていてね。」 「…そうよね。女の子しかうちには出来なかったし。だから、3年も前に男の子の養子をもらったんじゃない。」 「ハッキリ言えば、紗羽が目障りなんだろ?」 「どうして?」 「大きくなったら、財産をよこせと言ってくるのが目に見えているからな。」 「…そう。でも、あの子をどうしろと?」 「死んだことにすればいい。」 「今までだって、あの子はいないものとして接してきていたのに、まだ不服だと?」 「そうじゃない。親戚とかの目があるからな。施設に預けても、それがバレたら何を言われるか。それに、あの子をこれ以上ここにいさせては、虐待と言われかねない。」 「世間体ね。」 「そういうことだ。だから、急な病気で死んだことにすればいい。」 ヒソヒソと話す声。 リビングのドアに耳をかたむけて。 お父さんたちの会話を聞いちゃった。 …あたしがジャマなのは、薄々は気づいてた。
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