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その手はいつも、遠かった。
追いつきたくてどんなに必死に頑張っても、届かない。
触れたくてどんなに必死に思いを馳せても、かすりもしない。
歯がゆさをかかえたまま、時間だけが無情に過ぎていく。
そうして気づけば、決して消えることのない傷として心の中に残っていた。
日常の中でふとした瞬間に感じる、痛み。
折に触れて見え隠れする、その傷跡。
見えないように、気に留めないようにしながら生きることは、難しい。
どうしたらその痛みから逃れられるのか、どうしたらその傷跡と向き合えるのか、考えても考えても、答えはまだ見つからない。
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