第一章、平塚と黒い猫娘

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放課後、委員長こと、神崎咲智を先に帰らせて、後始末を終えると俺、平塚弥一は教室の戸締まりをしていた。 子供の頃、物心がついた頃か、生まれつきかは覚えてないが、他人には視れないし、見えない者を視ることができた。それは特別なことで、すごいことだと思って、結局、『視るだけ』だとわかり同じく落胆したことを覚えている。それでも、誰かの役にたてるのだと思い、ヒーローにでもなった気分だった。 『ヒラツカの、ひは……』 と、昔の回想に浸っていたら、余計なことまで思い出しそうになりブルブルと頭を振って、自嘲気味に笑う。六月も終わりにさしかかり、もうすぐやってくる夏休みが差し迫る現在の俺を、過去の俺が見たらなんてなんて言うだろう。 極力、人と関わらず、また、人が集まる場所も避けていた俺が、真面目に授業を受けて、毎日、学校に通っているなんて、昔の俺だったら想像もしないに違いない。 人の集まる場所、特に教室のような、常時、人が集まる場所は『よくない物』の溜まり場になりやすい。よくない物とは、人のストレスや鬱憤が吹き出した物である。特に害がある代物でもないけれど、厄介なことに人の感情で、何かしらの現象を引き起こすことがあるのだ。例えば、ひとりでに椅子が倒れたり、置物が落ちたり、俗にいう、ポルターガイスト現象もその一種ではないかと、片足のオカルト専門家の真似事をしてみるが、さて、どうなのかと答えをおいそれとは出せないけれど、少なくとも、そのきっかけはあの委員長だ。
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