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そんな委員長こと、神崎咲智と関わるようになったのは、五月の上旬にあった。ろくろっ首の一件からだ。
霊媒体質かもしれないという、疑念は前々から持っていた。委員長の周りには必要以上に念や霊を惹きつける彼女が、俺と同じような体質なのかもしれないという思いと期待はあったけれど、それと同じくらいに、あまり関わり合いになりたくないという気持ちもあった。もし、俺の勘違いだったら? もし、俺のせいで危険な出来事に遭遇したら? もし、俺が原因で怪我でもさせてしまったらという後ろ向きな気持ちがあった。それなのに今は……
「よう、ヒラツカ、ひさしぶりじゃねーか」
そんな回想を打ち砕く存在が、校門に女子高生が登っていた。右肩に黒猫をのっけて、夕暮れ時に煌めく瞳は大きく見開かれ黄色に輝く。
「委員長?」
ひさしぶりというか、数十分前に別れたはずなのにえらく様変わりした、神崎咲智がそこにいた。
「イインチョウ? ああ、この女のことかぁ、イインチョウね、イインチョウか、ずいぶんと居心地が良さそうなんで泣き憑かせてもらったぜ、ヒラツカ」
委員長に泣き憑いたという『何か』が口元をニィィィイイと歪める。
「誰だよ、テメー、つーか、委員長になんてことしてんだ」
「おいおい、俺のことを忘れたってのか、悲しいぜ、ヒラツカ、この猫神様を忘れるなんてな、いや、テメーは目をそらしてるだけなんだろーな、臆病者なテメーは過去からも、傷跡からも、罪悪からも目をそらして逃げ出してんだろよなー、ヒラツカ?」
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