プロローグ

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 じっとしていても、じんわり汗がにじむ。  その汗を乾かすようにそよぐ風が心地いい。  きれいな青空の下、    「ヒナ、こっち!」  どこからか、わたしを呼ぶ声がする。 「ハル? どこ?」  いくら進んでも、姿は見えない。 「ヒナ」  もう一度呼ばれ、やっと見つけた。  Tシャツに短パン。赤い帽子。  芝生の上には、虫取り網と虫かご。  ハルはポケットに手を入れ、やんちゃに笑う。  毎日見ているのに、見る度に胸がトクンと音をたてる。    「ハル!」  転けそうになりながら走った。  早く行かないと、いなくなっちゃう。 「――っ」  突然の強い光に目を瞑り、うつむく。  そして、恐る恐る目を開けた。  ……やっぱり。  わたしがいるのは、白い部屋。  何もない。誰もいない。  ――夢の中でも、ハルに会うことはできないんだね。              
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