空白の時間

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「山内さん……」 「え?」  どうしてこの名前を出しちゃったんだろう。  他に、もっと話題はあったはず。 「山内がどうかした?」  これ以上、何も聞かない方がいい。  頭では分かっているのに、わたしの口は言うことを聞いてくれない。 「何か、しましたか?……山内さんと」  また敬語になる。  ハルは一瞬ぽかーんとした後、わたしの名札を確認してから、本に視線を戻した。 「篠崎さんに関係ある?」 「えっ……」  ページをめくりながらわたしを見て、またにっこりと笑う。 「ないでしょ?」  それだけの言葉なのに、ハルは微笑んでいるのに、目に涙がにじむ。  傷つくことを選んだのは自分なのに。  「……はい」  涙がこぼれそうになるのを必死で堪えて、 「そろそろ帰ります」  カバンを掴み図書室を出た。 
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