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高校一年生の夏。
「ありがとうございました!」
いつものように忙しい店内で私が目にしたのは、スーツを華麗に着こなす背の高い大人の男性だった。
仕事中だというのに目が離せなくて危うく水をグラスごと落とすところだ。
「はい、お伺いします」
呼び出しのベルが鳴り慌ててテーブルへ駆け寄る。
(あの人の席だ...)
「アメリカンコーヒーひとつもらえるかな」
「はい!かしこまりました!」
緊張のあまりいつもの倍以上の声を張り上げてしまい恥ずかしくなる。
「はは、元気がいいね。じゃあ頼むよ」
大人の男性の笑顔に見とれそうになりながらも自分にムチを打つように仕事へ戻る。その日は男性が店を出たあともずっと頭から離れなかった。
(何歳なんだろう。三十くらいかな)
一回り歳の違いを感じながらもどんどん惹かれている自分に戸惑う。
その日は布団に潜り込み寝付くまで男性のことで頭がいっぱいだった。
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