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風呂屋(仮)の主人の見た目はとてもいかつい男だったが、リリィを引き取らせて欲しいと言うと素晴らしい笑顔に変わった。
可哀想だからと引き入れたのはいいが相当手を焼いていたらしい。
店に置いていたら勝手に店内探索を始めるし、開けてはいけないよと言ったトビラから開けようとする。
仕方なしに外で看板を持たせていたら、今度は知らない人についていこうとする始末。
「なんか泣いて喜んでたね……」
アイナはリリィの頭をくしゃくしゃと撫でながら、同情する目で振り返った。
「そういえばリリィは空から落ちてきてなんで無傷なんだ?」
「魔法使ったから」
どうもリリィは魔法関連の話になると興味を失う節がある。
そこだけはハルミと真逆。
「さて、あと一人だっけ?」
「そうなんですけどね……」
ここからが全くと言っていいほどわからず、思わずリリィに尋ねてしまうほどだ。
「グリフは何をしてると思う?」
「んー、寝てると思う!」
子どもにまで怠け者認定されるのはどうかと思ったが、そこは事実なので仕方が無い。
「てことは宿屋?」
「いや、あいつにそんな金は無いはずです」
グリフは人間の貨幣を持っていないことはわかっているし、その気になればそこらへんのカエルを食べて生き延びる男だ。
野垂れ死んでいるなんてことは絶対にない。
「じゃあやっぱりあれかなぁ」
そう言うとアイナは先ほどから視界に入っていた貼り紙を指差した。
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