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「まままま、魔物!?」
「私もだよ」
「リリィも!?」
天地がひっくり返るような叫び声をあげてアイナは後ずさった。
そもそも人間の国であるハルシュタットで住んでいる限り魔物と遭遇することはほとんどないのだ。
その仰天も仕方ない。
「あ、俺は人間ですよ」
「何で魔物と一緒にいるの!?」
アイナはハルミの肩を掴み、とても心配そうに質問した。
目には涙を浮かべている。
まるで息子が非行に走ったかのような口ぶりで話しているところをみると、やはり彼女はハルミの中に弟を見ているようだ。
アイナなら大丈夫かとすべてを話したハルミ。
だがあまり納得はしていないらしい。
「確かに……わかるよ。 リリィはちょっとバカだけど良い子だ」
そこまで褒められてはいないはずだが、リリィは照れながらニマニマと笑っている。
「でも、やっぱり心配だよ……」
心配されるのは決して悪い気分ではない。
しかしハルミは田舎にいた頃から、いつもそうだった。
弟のような子としてしか見てもらえず、どんなことをやっても彼は一人の男として見られたことはなかった。
「とにかく、まずはグリフを探すのが先決です」
「そうか……そうだよね。 わかってる」
きっとわかってなどいないだろうし、現時点では何度説明してもムダだ。
これはもう実際に会ってもらうしかない、ハルミはそう思いこの話題を終わらせた。
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