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レリュートが僧侶として種族超過していれば、リリィになす術はなかった。
しかし彼は魔法を使う無職。
抗うことのできない、いずれ来るであろう未来を鼻で笑ってレリュートは魔法を使い続ける。
倒れてしまえば戦闘放棄となってしまう。
自分のプライドは果たして許してくれるだろうか。
「絶対に許してくれないよなぁ」
そう呟いて、レリュートは黒粒子を止めた。
不思議そうな顔で彼の顔を覗くリリィ。
レリュートは気が付いていた。
あと二回、三回ほど使えば自分は死ぬ。
戦いの途中に自分の都合で死ねば、目の前で命を賭けて戦う少女に失礼だろう。
最後の覚醒。
レリュートは唱えた。
「終極の権利【オーバーチェックメイト=フィアンテ】」
「終わらせる権利は俺にある」
この場の空気が変わった気がした。
全てを投げ捨てて持てる思考を黒粒子につぎ込んだ。
粒子の絶対量が増え、上空へと飛行していく。
その速度は変わらず残像を残すほどに速い。
今日の夜空は星が見えにくくて月明かりも注がれていない。
王都が赤く燃えているせいもあり、空を見ても何が起こっているのかはわかりにくかった。
王都を覆い尽くすほどの粒子が、地上に向かって降り注がれようとしている。
「ただの粒子じゃない。 触れたら死ぬぞ」
生き物の生存を許さない粒子が、王都上空を覆い隠していた。
考えうる全ての覚醒が施された粒子は、王都全ての人間を殺そうと動き出した。
完全反射は生きている。
自動防衛は捨てているか。
この国で唯一対抗できるであろう少女が、空を見上げてキッと睨んでいた。
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