第二十五話【終戦】

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「わがままな人なんだね」 リリィが切なそうにそう言った。 自分主義、自分勝手、身勝手に相手を引っ張っていく。 そんな気概を、少しは彼にも覚えてほしい。 もっと自分勝手に引っ張っていって欲しかった。 そう心に思いながらリリィは最後の魔法を唱えた。 「無能力【オーバーチェックメイト=フィアンテ】」 相殺。 降り注ぐ粒子を受け入れる粒子がぶつかり合い、消滅。 王都全てを飲み込みかけた粒子は、なんともあっさりと消え去っていった。 「無職ってのは、世知辛いねぇ」 そして満足そうに両腕を広げて、爽やかな笑顔で立ち尽くす男に向かって、黒粒子を打ち出した。 体を構成する細胞を食い破り、その身が滅んでいく。 頭の中は真っ赤に染まり、これほどの激痛は生まれて初めて感じるものだ。 「おい……リリスエルダ……」 激痛で頭は冴えているが、意識は薄れていくという矛盾の中でレリュートは口を開いた。 「俺という存在を……俺という最強の存在を……」 レリュートはリリィの魔法をなんとなくだが把握していた。 自分と同様の魔法を使用できる。 「その身に……宿せ。 覚醒の権利【オーバーチェックメイト】」 無意味に使用された覚醒魔法。 リリィにその概要を伝えて息を引き取った。 最強という立場を得て、その日のうちに命を終える。 結局は誰にも名前を覚えてもらえず、彼は一人の少女によって殺された。 しかし彼は王国最強という国の頂に立った男。 彼を殺したのは彼自身が持っていた魔法。 誰か他の人間が持ち得るものではなく、自身の魔法でその生涯を遂げた。 いずれ来るであろう種族同士の対立で、より強い相手と対峙した時、リリィはきっと覚醒の権利【オーバーチェックメイト】を使うだろう。 死してなお、今度は世界の頂を目指す。
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