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薄暗い廊下を歩き続けている。
過去に似たような牢獄に閉じ込められていたことを思い出してしまったハルミ。
独房に閉じ込められるほどの囚人は、大半が相応の重犯罪を犯している者。
オリエンテーションには参加が許されていない。
ハルミの顔も知らなそうな人々ばかりだった。
アレクが松明を持ち、囚人服を着ているハルミが気だるそうに歩いている。
寝る前に何度も考えて、これだと思った決め台詞をスカした。
もうどうでも良い、やってられなかった。
「最初はポカンとされていたな」
世間話のつもりか、アレクが語り出す。
「次第にキミが何を言いたいのか気が付いた者たちが笑い始めた」
この男は昔からそうだ。
人の気持ちに気が付けない。
意外と自分の正義を押し付ける節があって、勢いで納得させられることが多かった。
「おもしろかったよ、あれは」
「やかましい!」
「なんだと、誰に口を聞いている!」
仕事モードのアレクにはまるで冗談が通じず、怒られたハルミは黙り込むしかない。
そしてそれから少しだけ歩いた独房に、ハルミに面会を申し出た女性が椅子に座っていた。
独房なのに椅子がある。
足を組んで優雅に紅茶を飲んでいる彼女は、囚人とはとても思えない待遇だ。
「アレク。 パイプを持ってきてくださらない?」
アレクに向かってお使いを頼める女性。
革命軍首領、王族にしてハルシュタット最大の謀反人。
グラデシア=ハルシュタットが鎖に繋がれてそこにいた。
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