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王都の住人は復興作業に追われていた。
家を無くした人々のために作られたプレハブはまだ量が少なく、王城の一部を避難区域として開放している。
戦争によって家族や知人を失った人々の悲しみも、まだ完全には癒えていない。
きっと癒えることはないのだろう。
戦場となった場所はほとんどが瓦礫の山となっていて、それを撤去してからでなければ家を建てることができない。
無事に残っている広場にはプレハブが建築されようとしていた。
作られた骨組みから慣れた手つきで縄を下ろし、そこへ軽やかに降りながら釘を打ち付ける建築技師達。
その中に一人だけ女が混じっていた。
見学している男達は大したもんだと感心している。
すでに女の中ではファンのような集いができていて、時折彼女の名前を呼ぶ黄色い声が聞こえてくる。
「アイナさーん!」
アイナは釘を打ち付けるのを止めて、悲しそうに手を振った。
そんなアイナの周りには、工具を渡す担当の白い精霊がふわふわと浮かんでいる。
アイナの下にいる二人。
魔法陣から次々と精霊を生み出してサポートしているエリカ。
「はじめチョロチョロ、なかぱっぱっ。 “お”で始まるものなーんだ」
そして暇そうにしているグリフがエリカへと謎かけをしていた。
暇なわけないのだが、彼はそこまでやる気が無いらしく、仕事をサボっている。
「はじめチョロチョロ……わかった! “お米”!」
「“お前”だよ、バカすけ。 この能無し騎士団どもめ」
唐突な罵倒にエリカが怒った。
「何よ! どういう意味よ!」
「言葉の通りさ。 お前たちはレリュートが暴れている時、一体何をしていたんだい?」
グリフに痛いところを突かれたせいか、サッと目を逸らした。
「上に聞かないと……その答えは出せないので」
「レリュートが自害したから良かったけど、しなかったら大変なことになってるよ? 自覚ある? ん?」
「いや、ですから……この件に関しては持ち帰って検討させていただくということで……」
レリュートは自害した、ということになっていた。
リリィが戦って勝利したという事実を大っぴらに公表するわけにもいない、という苦肉の策。
おそらくレリュートが聞いたら激怒するだろう。
珍しくグリフはリリィの戦闘の後処理を担当していた。
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