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「はじめチョロチョロ、なかぱっぱっ……」
グリフが木材を運びながらぶつぶつと呟いている。
「はじめチョロチョロ、なかぱっぱっ……」
「うるさい! それが私と何の関係があるのよ!」
魔法陣の周りをぐるぐると回りながら、嫌味ったらしくグリフは何度も呟いている。
痺れを切らしたエリカが怒鳴った。
しかしグリフ。
いきなり怒鳴られたことも気にせず、むしろ彼女が何を騒いでいるのか理解できないといった表情で一言。
「別に何も関係無いけど?」
「このやろー!」
あっけらかんとそう言われて、エリカがブチ切れた。
「そこっ! お喋りしてんじゃない! 怪我するよ!」
上の方から叱り声が聞こえてくる。
彼らが遊んでいるように見えたアイナが一喝。
グリフはため息を吐いてから、マジメに働き始めた。
「……キミのせいで棟梁に怒られたよ」
「なんであの人、あんなに釘を打つの上手いの……?」
とても戦士には見えないアイナを不思議そうに見ながら、二人はお喋りを止めた。
復興作業はきっとすぐには終わらない。
根本の原因である革命軍残党にやらせる訳にもいかず、王国側の人間がやらなければならないという理不尽さ。
しかし彼らはそんなことを微塵も思わずに働いていた。
家がある人が、家なき人のために働いている。
それだけで王国は復興を約束されているような物だった。
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