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~第一話。~
「如月!そろそろ始まるぞ!準備しろ!」
「はーい。」
口先だけで返事をした。
こいつ口うるさいから嫌いなんだよな。
今日は入学式だ。
風紀委員長の俺は、インフルエンザで欠席した生徒会長の代理で『新入生歓迎の挨拶』とかいうのをやらされる。
普通、副会長がやるだろ。
留学中って何だよ。
まぁ、なんだかんだで俺がやることになったわけだ。
いつもよりしっかり制服を着て、体育館ままでの道のりを歩く。
突然目の前に見えた人だかり。
「早く並んで体育館入れよ!」
教師達が大声を出す。
その場にいる生徒達が揃って動き出す。
人垣の中にいたのは1人の女子生徒。
リボンの色から1年だと思う。
そいつは座り込んで、ぐったりとしていた。
「おい、大丈夫か?」
返事はない。
……ちゃんと呼吸してるだろうな。
そいつの顔にかかった長い黒髪をどける。
………その顔に、思わず見惚れた。
「おい、如月!遅れるぞ!!」
「え、こいつどうするんすか?」
「久遠が運ぶってさ。とにかくお前は入学式だ!!行くぞ!」
久遠紫音(クドウ シオン)はいわゆる保険の先生。
任せておけばいいだろうけど、何か心配だった。
でも、口うるさい奴がそんな事を許す訳がなく。
半ば引きずられるように、体育館に向かった。
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