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こんなことを武蔵さんに対して口にしたら顔を真っ赤にして恥ずかしがり、大和だったら『ふふん、そうでしょうそうでしょう!』と嬉しそうに胸を張るだろうけど……三笠さんはそんな一筋縄でいってはくれない。
「ふふ、ありがとう。そういう夜美野ちゃんだってほっそりしているじゃないか」
「……もう少し胸が欲しいところですけどね」
三笠さんは(30サンチ砲のせいか)貧乳と呼べるサイズだけど、そんな彼女よりも私は胸囲が乏しいのだ。
「気にすることはないさ」
と、三笠さんは芸術品を愛でるかのような目をしながら私の顔を見つめてきた。
「夜美野ちゃんの瞳、私は好きだね。キラキラと光る赤い瞳はまさしくルビーのようで……。胸がなくても、夜美野ちゃんは美人なんだ。自信を持つといい」
「……口説かれてしまいました」
しかも照れることなく。さすがは三笠さん。私とは人生(?)経験が違うみたいだ。
「おっと、夜美野ちゃんを口説いたらみんなに嫉妬されてしまうね。気をつけないと」
くすくすと笑う三笠さん。まるで子供扱いされているようでいて、大和たちが苦手意識を持ってしまうのも何となくわかる。
「はい、どうぞ」
ひとしきり笑ってから三笠さんはコーヒー豆を手渡してきてくれた。
「ありがとうございます。おいくらですか」
「今日のところはサービスしておくよ。いつも大和たちがお世話になっているからね」
「いえ、その分お店で働かせているから別にいいんですけど……。ま、ご厚意はありがたく受け取らせてもらいますね」
三笠さんは外国生まれなせいか『遠慮』という概念が好きじゃないみたいだから。
私の対応に三笠さんはたいへん満足されたようだ。
「うんうん、私、夜美野ちゃんのそういうところが大好きだよ?」
「また口説かれてしまいました」
大和たちからの妄言に慣れてなかったら頬の一つでも赤く染めていただろう。
やれやれと、三笠さんが肩をすくめた。
「夜美野ちゃんは一筋縄でいかないねぇ。もうちょっと照れてくれてもいいじゃないか」
「…………」
こっちのセリフだ、というツッコミよりも先に三笠さんは話を先に進めた。
「さて、最近のみんなの様子はどうかな?」
みんなとは、もちろん我が家に居候する船魂たちのことだ。
「騒がしいですよ。元気なのはいいことですが、変わり者ばかりで困ってしまいます」
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