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大和武蔵は引きこもりで、他の人も何かしら特徴的な個性を持っているから。
三笠さんがおかしそうに笑みを深めた。
「類は友を呼ぶ、ということわざを知っているかな?」
「……私は常識人であるつもりです」
「そう思っているのは夜美野ちゃんだけかもしれないよ? なにせキミは『船魂』なんていう非常識な存在と平気な顔で同居しているんだからね。夜美野ちゃんも非常識な存在だと断言しても、そうおかしくはないはずだよ?」
「ぬぅ」
反論できない私だった。
まぁ、美味しい三笠コーヒーをタダで手に入れることができたのだから、多少の変人扱いには目をつぶろう。うん、決してこれ以上抵抗したら更なる被害を受けそうだからなんて弱々しい理由じゃないんだからねっ。
横須賀駅前に着くと、すぐに武蔵さんと合流することができた。
「大和は?」
「それが、途中ではぐれてしまいまして」
「またか……。ケータイは?」
「出かけるときに持たせたんですけど、電源を切っているみたいでして」
「まったく、電源くらい入れろっていつも言っているのに……」
私が呆れていると、不意に声を掛けられた。――金髪の外人さん。二十代くらいの男性で、お腹がぷっくらしているのでたぶん軍人じゃなくて観光客だ。おそらくは道を聞いてきているのだろう。
やべぇ。
私は英語なんてできないし、武蔵さんも外国に行った経験がないので推して知るべし。くそうこんな時に英国生まれの金剛がいればなぁ。
「あ~、ソーリー、アイ、キャント、スピーク、イングリッシュ」
私は拙い英語でそう答えた。目を左右に泳がせながら。
そんな私の態度が『困っている』ように見えたのか――
「――ちょっと待てぇい!」
と、頭上から叫び声が降ってきた。私が顔を上げると、……横須賀駅の小さな駅舎、その屋根の上で大和が仁王立ちしていた。珍しく武蔵さんと同じ鎧甲冑を着込んでいる。いつもは『動きにくい~』と着ないくせに。
ざわざわと。駅周辺にいた人たちの視線が大和に集まる。聞こえてくるのは『何かの撮影かしら?』、『ほら、あの喫茶店の店員よ』、『あぁ、あの変人喫茶ね』というひそひそ話だ。またうちの店の評判がぁ……。
しかし大和はそんなざわめきを気にすることなく。わざわざ電源を入れたらしいケータイで音楽を鳴らし始めた。BGMのつもりらしい。
「この曲は……桃太郎侍ですね」
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