ふなたまっ!

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 思わず武蔵さんの胸部を凝視してしまう私。46cm砲×2=92、なのかどうかは知らないが、この姉妹の胸囲は92センチもある。……世間一般的な価値観で言えば『貧乳』となってしまう私としては羨ましいを通り越して恨めしいサイズだ。  その恨めしさを声に乗せる。 「なるほど、『くるり』と回れば自由な服に着替えられるくせに、そんな買い物にわざわざ付き合わせるってことは……貧乳である私にケンカを売っているんだな? そのケンカ勝ったぁ!」  ポキポキと指を鳴らす私。15万馬力相手に力比べでは勝てないが、先手必勝なら! 「売ってませんよ!? その、服の着替えはイメージが重要で、ブラみたいに立体的で身体に密着するものはイメージしづらいんですよ。それに、……そ、空菜さんと一緒にお出かけしたかったですし」  何か可愛いことを言っていたのでひとまず怒りを収める。ふぅ、と一息。 「……ま、いいか。どうせ買い物には付き合えないんだし」 「え?」 「は?」  と、武蔵さんと大和が同時に私の顔を見つめてきた。武蔵さんは悲しそうで、大和は不満そう。 「ど、どうしてですか? やっぱり私たちと一緒に買い物をするのは嫌なんですか?」 「空菜、今日はデートと言ったじゃないの。空菜が一緒じゃなくてどうするのよ?」  ずいっと顔を寄せてきた二人をなだめてから私は理由を説明した。 「もうすぐコーヒー豆が切れちゃうから」  私の家は喫茶店をやっているのだ。売り上げは……うん、聞かないで欲しいところ。 「で、豆の補充に三笠さんのところへ行こうと思っているんだよ」 「むぅ」 「ぐぬぅ」  二人はコーヒー豆をかみつぶしたかのような苦い顔をした。それだけ『三笠さん』のことが苦手なのだろう。話してみると面白い人なんだけど、まぁ二人にとっては大先輩みたいなものだから苦手意識を持つのも仕方ないのかもしれない。  私たちはバス停で降り、駅前での待ち合わせを約束してからそれぞれの目的地へと向かった。三笠さんのいる『三笠公園』は駅から少し歩かなければならない。  駅からのんびりと歩いて十五分ほど。記念艦『三笠』がある三笠公園に到着する。日露戦争の武勲艦・三笠が保存されている公園だ。コンクリートで船体を固定されてしまっているのが少し悲しい。 「おぉ……」  何度来ても、三笠を見るとつい声を漏らしてしまう私だった。
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