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亮太は俺を睨みつけてから、香織の方を見て少し心配そうに
『なんともねーのか?』
『2人共、心配し過ぎだよぉ』
香織は笑顔で答える
『ならいい。んじゃ、帰るか』
そう言うと釣り竿を片付け、魚を海へ帰した
『ただいま~お腹空いちゃった~。お母さん、ご飯出来てる~?』
『出来てるわよ。食べる前に手洗ってきなさいね』
母はテーブルに食器を並べながら答えた
『亮太、釣れたか?』
『まあまあだ』
父の問いにダルそうに答える亮太
実は、この親は本当の親ではない。元々、俺と亮太、香織は孤児だった。当時から兄弟のように仲のよかった俺達をまとめて引き取ってくれたのだ。親を知らない俺が言うのもなんだが、普通の両親、いやそれ以上に愛情を注いでくれていると思っている
『香織、大丈夫だった?』
母が俺に心配そうに尋ねる。
『大丈夫なんじゃないかな?』
『そう…』
母が心配するのは無理はない。香織は生まれつき身体が悪かった。医者の話では長くは生きられないかもしれないとの事だった
『いっただっきま~す…お、これ美味しいね』
香織は、その事を知っているのだが、常に明るく振る舞っていた
ー別荘から帰って数日後…香織は意識を失って病院に運ばれたー
バイト中、香織が倒れたと連絡を受けた俺は急いで病院に向かった
俺が着いた時には両親と亮太は既にいた
『なんでだよ!お前医者だろ!?香織助けろよ!』
いつもダルそうにしている亮太が声を荒げていた。母は椅子に座り込み、両手で顔を覆っている。父は沈痛な面持ちで立ち尽くしている
『ちくしょうっ!なんでアイツが…なんとかしろよ!出来んだろ?なぁ!?』
『亮太…』
医者に食って掛かる亮太を父が止める
俺は、医療機器に繋がれた香織を見ている事しか出来なかった
ー1年後ー
俺達は毎年恒例の別荘に来ていた
特にやる事もないので俺と亮太は釣りに行く事にした
亮太は相変わらずダルそうに釣り竿を握っている。俺もその横でボーッと海を眺めていた、その時、後ろから声がかかる
『なんだ~?私を置いていくとはひどいヤツらだな!…さてはアレだな~2人きりでイチャイチャするつもりだったんでしょ!?』
振り向くと、白いワンピースに麦わら帽子を被った香織がニヤニヤと笑っていた
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