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ワイワイ…ガヤガヤ……!!
――夜の頃。
此処は人里より離れた処―人も知らぬ妖怪の溜まり場―酒場。
夜は妖怪等が最も盛んな活動時間。
その為、この酒場は毎日の様にどんちゃん騒ぎである。
酒を大量に注文し飲み干す妖怪(モノ)、今日(イチニチ)の事象に浸る妖怪が居れば愚痴る妖怪……――また、1人で飲み食いする妖怪……。
「よぉ、マスター」
「ん?」
“マスター”と呼ばれ振り向いた店主。
彼の名は氷水 忠幸(ヒスイ タダユキ)である。
「あぁ、ナナシか」
と、彼が口にした名は眼まで覆い被さる程の長髪に、その頭には獣の耳を生やし、犬にも似たフサフサの尾を生やしている妖怪を示していた。
『名無し』では無く『ナナシ』――イントネーションが違うだけで、意味も異なってしまう。
さて、ナナシは相変わらずのつまらなそうな表情を浮かべ、マスターの前の空いているカウンター席――特等席に座る。
「今日も何時もヤツか?」
「いーや、俺の取っって置きのヤツ」
「お?良いのか?」
「あぁ、構わねー」
彼の口元が綻びる。
その意味にマスターは納得したようで、一時カウンターキッチンから離れ、裏手へ。
戻って来た頃には、手には貯蔵庫でゆっくりと寝かせた酒瓶が握られていた。
――これがナナシのお気に入りの酒。
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