ある猫と弟子と黒猫と

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  翌日、マスターとお弟子さんは事件の調査へと向かってしまいました。 マスター、一応師匠っぽいことするんですね。 一人でのお留守番は実はかなり久々なのでそわそわします、そわそわ。 マスターのお留守は私が守って見せますよ。 そう言ってマスターに日頃から研いでいる爪を見せたのが朝頃のこと。 今は午後三時です、おやつの時間ですね。 ちゃんとおやつもマスターは用意していってくれました、流石ですマスター。 私がおやつのシフォンケーキに口を付けようとした、そのときでした。 『おい!』 裏庭に面した窓の方で、声がしました。 この家には今マスターは居ません。 このお家を守るのは私なのです。 使命感に思わず猫背も伸びました。 そろりそろりと近付いてみれば、なにやら開け放たれた窓際に黒い影。 『あ、ようやく来たか。おいおま、え、…!?』 “黒い色は魔物だ、覚えとけよクロ” このお家は私が守るのです。 私は影へと飛びかかりました。 …出でよ!伝家の宝刀乱れひっかき花の舞!! 手応えは、ありました。 やり遂げましたマスター、黒い物は魔物なんですよね! 前に教えてくれましたもんね、ちゃんと覚えてます。 私、一人でもこの家を守りきって見せましたよ! マスターとこのお家を守るのは私の仕事で、…。 …あれ。 『ふ、っざけんなよ!いきなりひっかく奴があるか…!』 『…ねこ?』 『お前にはこの俺様が犬にでも見えてんのかよこの馬鹿!!』 黒猫って、魔物でしたっけ。 『…ごめんなさい、悪い魔物かと思ったのでつい。』 『…まあ、このしふぉんけーきとかいうのが美味いから許してやるよ。』 やっぱり魔物じゃなかったです。 紛れもない、私と同じ猫でした。 シフォンケーキを一心に口に詰め込む彼の名前はクロト君と言うそうです。 同じクロですね。 それにしてもマスターマスター、黒色でも魔物じゃない場合もあるんですね。 そういえばちゃんと相手を観察すること、も言われてたのに忘れてました。 反省します。 『…それで、クロト君は一体何のご用でしょう。マスターなら今はお出かけですよ。』 『あんな超の付くような無愛想に用は、…あ、いや、あの男に用はねーよ。』 マスターへの侮辱は許しませんよ。
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