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『…それなら何のご用ですか?私、クロト君には初めて会いましたが。』
『いや、珍しくあの男がお前を置いて出掛けてたから覗いてみようと思っただけだ。お前ここに来て一年くらいになんのに、一度も外でたことないだろ。』
『あれ、私のこと知ってたんですか。』
『真っ白は目立つだろ。窓越しに何度か見たことがある。…別にわざわざ見に来てた訳じゃなからな!』
『はあ…。確かに私、マスターに外にでちゃ駄目って言われてますからね。』
ようやくシフォンケーキを食べ終わったクロト君はお皿から顔を上げるとちょっと私から視線をそらしました。
『その、だからお前友達とか、居ないだろうから。だから、その、俺が友達に…』
『ああ、確かに居ないですね。というか、マスターが居ればそれでいいので作ろうとも思ってませんでした。』
『なってやろう、と…。…。』
『クロト君?』
何で脱力してるんですか、というか何で泣きそうなんですか。
『っ、お前なんて飼い猫になっちまえ!』
『私もう飼い猫ですよクロト君!』
クロト君は野良なんですかね?その様子だと。
叫んで落ち着いたのか、クロト君はそっぽを向きつつも顔を上げてくれました。
『…お前、ここの奴にちゃんと世話して貰ってんのか。』
『マスターですか?もちろんですよ。マスターはとっても優しいです。ブラッシングも撫でるのも上手なんですよ。ほら見て下さいこの毛並み、ふっかふかのつやつや、サラサラのもふもふですよ。触ってみます?』
『触るか馬鹿!』
何で怒るんですか。
『それに明日は首に巻くリボンを買ってくれるんだって言ってました!ずっと前からの約束なんですよ。楽しみです、何色が良いと思いますか?』
『黒。…まあ、ちゃんと大事にされてんだな。』
『はい、勿論です。』
『…ならいい。』
それだけ言うとクロト君はひらりと窓際に飛び乗ってしまいました。
『もう行っちゃうんですか?』
『まあな。俺様だって暇じゃねーんだよ。』
『そうですか…残念です。初めてできたお友達なのでもっとお話ししたかったんですが。』
『っ、馬っ鹿じゃねーの!』
だからなんてそこで怒るんですか。
私何もしてないですよ。
『…まあ、気が向いたらまた来てやる。』
『はい、楽しみにしてますね。』
『…ふん。』
そのままクロト君は素早く塀の向こうに消えてしまいました。
結局彼は何しに来たんでしょうね。
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