ある猫の独白

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  当方は猫なのです。 名前ももうあります、クロです。 ちなみに、毛は真っ白です。 私のマスターはクロムさんと言います。 本名は確か、クロムハーツ・レーベル・なんとかかんとかです。 名前はそんなに重要じゃないと私は思います。 でも、私の黒という名前はマスターの名前から貰ったものなので、やっぱりちょっと大事です。 私はマスターが大好きです。 マスターは大魔導師なのだそうです。 とっても強くて偉いのです。 この間はどこかの国の、とってもとっても悪い王様を泣かせているのを私は見ました。 マスターは正義の味方、ヒーローなのです。 なのでマスターは、よく道端で綺麗なお姉さんにちょっかいをかけてる悪い人を踏みつぶしたりもします。 どこかで八つ当たりをしたりまた悪さをしないように、お財布も没収していました。 皆改心して泣きながら感謝していました。 そんなところにまで気がつくマスターは凄いと思います。 私はマスターが大好きです。 雨の中、行くところもなくて箱の中でうずくまるしかなかった私に差し出された手を私は一生忘れません。 極悪非道だとか悪魔だとか冷酷だとか、他の人は色々なことを言うけれど、マスターが優しいことは私が誰より知っているのです。 だから今日も。 「…よし、クロ、仕事に行くぞ。」 「にゃあ」 私がマスターを守ってみせますよ、と私は爪を研ぐことを忘れないのです。 *** マスターは私に甘い。 一応これでも、私はちゃんと自覚しています。 マスターは私に相当甘いのです。 どれくらい甘いのかというと。 「…で、今回はその妙な宗教組織を潰してこいってか。面倒だな…依頼金はそれなりに弾んで、」 「うにゃあ。」 「…ああ、昼寝か?良いぜ、付き合ってやるよ。」 「え、ちょっとクロム!まだ依頼の途中で…、ねえちょっと聞いてるの!?」 「あとで文書にして送れ。」 お仕事より私を優先してくれるくらいです。
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