ある猫の独白

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  正直に言うと私は、いつもマスターにお仕事を運んでくるこのぼんっきゅっぼんのお姉さんが嫌いです。 お仕事の話に、わざわざ胸元が大きく空いたドレスを着てわざわざマスターに密着してわざわざ並んでソファーに座ること無いじゃないですか。 隣に座れやコラ。 しかもこのお姉さん、マスターが居ない時には私に意地悪をしてくるのです。 “毎回毎回、アタシとクロムの甘い時間を邪魔しないでよねこのクソ猫。あーあ、何でクロムもこんな可愛くもない猫飼ってるんだか…!” そんな時間は妄想だ。 だいたい、マスターが可愛い可愛いと言ってくれれば私はそれで良いのです。 余所様に愛想を振る理由もありません。 そう言うのは犬の仕事なのです。 お姉さん時々私を蹴ろうとしたりもしますが流石に猫なのでそれくらいはよけられます。 よけられますがいい気はしません。 なので私はあのお姉さんが嫌いなのです。 「…にゃあ。」 「…どうした。」 確かに私のマスターは超の付くイケメンです。 美形なのです。 すっと通った鼻筋にさらっさらの黒い髪、切れ長の瞳は目があったら心まで見抜かれそうな気がする真紅です。 これで、国家魔導師で優秀で稼ぎも良いのですから、そりゃあもう猫の集会にマタタビを全身に巻いて飛び込むようなもんです。 ちなみにマタタビでなく鰹節でも間違いではないです、気を抜けば食べられちゃいます。 今だって、私を抱えて真っ白なシーツに寝ころぶ様はそれはもう綺麗なんです。 普段は目つきの鋭い怖い感じの顔ですが、こういう時はとろりと笑みを浮かべてくれるのですから、猫の私が見てもうっとりします。 撫で方も上手いから尚更です。 「にゃーあ。」 「眠いんじゃなかったのか?」 ゆっくりと瞳を閉じたマスターにぐりぐりと頭を寄せてみても特にマスターが怒る気配はありません。 笑って頭を撫でてくれます。 どうしてマスターがここまで私を溺愛してくれるのかは私には分かりません。 ただあの雨の日、他の人とは違ってマスターは私を見た瞬間に手を伸ばしてくれました。 「仕方ないな、構ってやる。…ほら、来いよ。」 大きなベッドに寝転がって、軽く手を広げて見せたのちに手招き。 イケメン、イケメンですマスター。 「にーい!」 そんなマスターの胸元へと私が飛び込むのは、やはり当然の心理と言えましょう。
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