ある猫の接待

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  ドタバタ、ドタバタ。 玄関の方が酷く騒がしいときは、たいていあのお兄さんが来ているときです。 「っ、くーろちゃーんっ…!!会いたかっ、へぶっ…!!」 「勝手に触んな。」 長い白衣にふわっふわのミルクティーカラーの髪、瓶底めがねからのぞく瞳は綺麗なオリーブ色。 リビングのあっちこっちにおかれている不思議な魔道具には目もくれずこっちへと直進してくるお兄さんの頭に勢いよく振り下ろされるのはマスターの手にしている魔導書で。 「いっ、た!いったい!痛ー…、何すんのクロムハーツ!」 「勝手にクロに触んなって毎回言ってんだろラスク。汚れる。お前の頭はスポンジか何かか。」 「手は洗ってきましたー、とうかこの国随一の科学者捕まえてよく言うよ。仕方ないだろ、クロちゃん位しか俺に無防備に体触らせてくれる生き物居ないんだからさー…。」 どたばたどたばたとせわしないこのお兄さんはマスターの古くからの友人の一人です。 ラスクさんはこの国の王様に仕える科学者だそうです。 その研究に魔物を使ったりするせいか、すっかりラスクさんは動物に嫌われる体質になってしまったのだと言います。 私も最初はものすごく警戒しました。 何か注射でもされるかと思って。 「俺動物好きなのになー、何で嫌われるんだろう…。」 「にゃあ。」 「ううう、クロちゃん位だよー俺の味方は…。もういっそうちの子にならない?」 「お前ここに自殺しにきたのか。」 ちちち、と指先で招かれたので近付けば涙目で顎をくすぐられる。 正直痛いですラスクさん、かわいそうなので我慢しますが。 だいたい後ろのマスターがマジ顔ですよ。 大変なことになってますよ。 「なんだよもー、冗談じゃないか。クロムも頭が固、…ちょっとまってちょっとまって、落ち着いて下さいクロムハーツさん!だめだめだめだめ、流石にガリア大陸創設記全812ページを振りかぶるのは駄目だから、俺死んじゃうから!」 「俺は余計な虫は払うんじゃなく叩き潰す主義だ。」 「ふざけんなよこの猫バ、か」 “ガッ!!!!” 実に良い音がしてました。
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