~工藤 潤一の場合~

3/19
前へ
/67ページ
次へ
 お袋はすい臓と肝臓のガンで亡くなった。  葬式は俺が喪主をやったが、あの頃の忙しさは今でも憶えている。  あの頃は妻もよく頑張ってくれた。  息子たちも寝ずの番をやってくれたり、親戚一同が集まっての食事の時にちょっとした手伝いをしてくれたりと、また頑張ってくれた。  思い返せば俺をタクシー代わりにしたりしていたお袋だったが、亡くなったとなるとどこか寂しさを感じる。  まるで生活の一部が切り取られたような、お気に入りの物を失くしたような、そんな感じが心のどこかにある。
/67ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加