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「やあ、いらっしゃい」 奇抜な眼鏡をかけた店主の右斜め後ろ、壁の額縁。 とくとくと小さく動く綺麗な心臓があった。 間違いない。 あれはお母さんの、お母さんの心臓だ。 「……あの心臓が気になるのかい?」 返事もしていないのに、心臓屋は私の答えを聞いたらしい。 少しニヤついてから、額縁を見つめてこう続けた。 「はは、君みたいな子供が買えるものじゃないよ、これは。子供向けはこっちこっち。ノミの心臓にタンポポの心臓、飴玉三つから交換できて珍しい物ばっかりだ」 がしゃがしゃ雑に置かれていくゴミ山。 相手にされない事くらい、最初から分かっている。
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