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『大変だよ。紫音ちゃん……、其処大阪だよ』
それはもっと信じられない答えだった。
「えっ、大阪!?」
あまりに唐突な言葉に私は呆然としていた。
(嘘だ。嘘だ)
私の頭は完全にパニック状態だった。
「何で大阪なの?」
『全く、私に判る訳ないでしょ?』
陽菜ちゃんの言葉が身に染みた。
「でも陽菜ちゃん。どうして大阪だと判ったの? それとGPSって?」
『一緒に申し込んだじゃない。ホラ、今どこ何とかってヤツよ』
「あぁ、あの時の……GPSだったんだ」
『位置確認OKとか、色々手続きしておいて良かった。でも何で大阪なの?』
「さあ、私にもさっぱり判らない」
『紫音らしいと言えばそれまでだけどね。取り敢えず此方はルームシェアの家見ておくからね』
「あっ、お願いね」
私はそう言って、電源を切った。
「あのー、此処大阪ですか?」
まだ整理出来ていないけど、携帯を取り上げた以上確かめなくてはならなかった。
「あぁ、そうだよ」
そう言ったのは、最初に声を掛けてきた人だった。
「知らないうちに此処まで運ばれたか?」
その言葉に頷いた。
「事情は解った。それでも、輸送料追加してもらわないとな」
ソイツは私から携帯を受け取りながら真面目に答えていた。
私と陽菜ちゃんは、二年半前に東京で開催された花の見本市で出会った。
広い会場を歩き疲れて、一番隅っこにあるレストランで食事をしようとしていた時だった。
同じ椅子に手を掛けたのだ。ばつが悪くて、どちらともなく笑い出した。
それが陽菜ちゃんだった。
陽菜ちゃんは、私の手を引いて隣の席に座らせてくれた。
私達はその後で会場に入り、素晴らしい花の数々を堪能した。
『あのー、私スイカズラの花が大好きなんです。今日の記念に貰っていただけますか?』
私はそう言いながら、忍冬で作った栞をバッグから出した。
『これ紫音ちゃんのお手製?』
陽菜ちゃんの言葉に私は頷いた。
『スイカズラは二つの花で一つなんです。だから花言葉は友愛とか愛の絆って言うんです』
私がそう言うと、陽菜ちゃんは目を丸くした。
『私も花言葉大好きなのよ。良かったら友達になってくれない?』
私は陽菜ちゃんの嬉しすぎる言葉に頷いた。
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