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「直樹君の部屋でお願い致します」
私は力強く言った。この際だから仕方ない。私は開き直ったのだ。
『お、ルームシェア宣言か?』秀樹君のあの言葉が私を後押ししてくれたのだ。本当はね。とっても恥ずかしいんだけど……
「えっ、俺か?」
でも、直樹君の最初の言葉がそれだった。見ると、直樹君の顔が青ざめていた。
(私がそんなにイヤなの?)
言葉には出せないが、私は相当落ち込んでいた。
直樹君は憧れの君だよ。本当は私だってイヤだよ。
私の寝相も寝言もみんな直樹君に見られるなんて恥ずかしいなんてものじゃないんだから。
だけど、やっぱり直樹君がいい。
でもどうしてだろう? 何で残ってる部屋を使えないんだろう?
其処があればこんな思いをしなくても済むのに……
(ひ、広い……)
直樹君に部屋へ案内されて驚いた。直樹君の手がドアノブにかかった途端に垣間見た部屋は、母と二人で暮らしているアパート以上はあった。
(こんなに大きな部屋ならベッド二つ位は置けるよね? 良かった。これで寝相が悪くても直樹君に迷惑かからないね)
でも少しがっかり。
(え、何で? 何で変なこと考えているの? もしかしたら、いけないこと考えてる?)
私はまともに直樹君を見られなくなっていた。
「此処はゲストルームだったんだ。だからキングサイズのベッドなんだ。中村さんがイヤなら俺は床に寝るけど」
直樹君は申し訳なさそうに言った。
(えっ!? それって私と一緒に寝てもいいってこと?)
そう考えた途端に首を振った。
「私が床に寝ます」
それと同時に言っていた。
この部屋の今の主は直樹君なんだ。主を床に寝かすことなんて出来る訳がない。そんなことより、一緒に同じベッドで眠りたいなんて絶対に言えなかったのだ。
「えーと、毛布とかある場所聞いていますか」
私は本気で床に寝るための支度をしようと思っていた。
「やはり俺が寝るよ。こんなこともあろうかと、寝袋持って来たんだ」
「寝袋ですか? 又どうして?」
「野球部の合宿なんかで必要だったんだ」
「何かキャンプみたいで楽しそうですね。私一度寝てみたかったんです」
私は何故かワクワクしていた。
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