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パニクッた頭でいくら考えても答えなど出てくるはずがない。
私は冷静になろうと思っていた。
私の居る場所は、本当にコンテナの中のようだった。
(やっぱり。引っ越し業者のコンテナかな?)
そう思いつつ、頭を振った。無賃乗車なんて絶対にやっていないからだ。
(何でこうなったの? ねえ、何で)
私はガタガタ震えながら、さっき垣間見た景色をもう一度見ようと顔を上げた。
コンテナの扉が開け放されて、その家の庭が見えていたのだ。
それが何処だか解らずに、ただ私はコンテナから降りられなかったのだ。
引っ越し業者としたら、迷惑この上ない出来事だったのに違いないと思うけど。
(身体中が痛いはずだ)
引っ越し業者の言う通り、私はコンテナの荷物の中に挟まれて移動して来たようだ。
(陽菜ちゃん怒っているんだろうな?)
そう思いながら、ため息を吐いた。
「やれやれ、呑気なもんだ。ため息吐きたいのはこっちだ」
ソイツは携帯を取り出した。
「待ってろ、今警察に引き渡すから」
「えっー!? やだ!!」
私はソイツの携帯を取り上げた。
「ごめんなさい。後でちゃんと返すから、今は私にチャンスをください!!」
私はソイツに向かって頭を下げた。
私の名前は中村紫音。二十歳。
親友の陽菜ちゃんにフラワーフェスティバルに誘われて、新宿駅前で待ち合わせしていたのだ。
そしてその後でルームシェアする家を見に行くはずだったのだ。
(陽菜ちゃんは今何処に居るのだろう?)
気になって携帯を見てみた。
(ありゃ。着信ばっか)
私は慌てて陽菜ちゃんに携帯電話を掛けていた。
「待ってて、友達に説明してもらうから」
私は自分の言葉の意味など理解していなかった。一体何をしようとしているのだろう。陽菜ちゃんにもこの状況が解る訳ないのに……
「もしもし陽菜ちゃん?」
恐る恐る携帯を掛ける。
『約束すっぽかし何遣ってるの? 今何処なの?』
普段は大人しい陽菜ちゃんが怒っている。
当たり前だ……私何遣ってるんだろう?
「解んないの。ねえ陽菜ちゃん、助けて」
私は陽菜ちゃんに泣きついた。
『待ってて……今、GPSで探すから……』
(えっ、GPS!? GPSで私の居場所が判るの?)
私は陽菜ちゃんの言葉が信じられずにいた。
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