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04/10 15:25
■「宿屋 時の鐘」
次の宿泊客のための部屋の準備を整えると、もう午後3時半になろうとしていた。
「空ちゃん、空ちゃん」
年をとっているが、温もりのある声が私を呼ぶ。
「部屋の準備が整ったら、少し休憩をお取り」
「ありがとうございます、トメコお婆さん」
エプロンを外し、休憩スペースに向かう。
ギシギシ軋む音をたてる階段を下る。
厨房の方からは夕飯の支度を進めるおばさん達が包丁を使ってキャベツを叩いていく。
「ああ、空ちゃん。今から休憩?」
厨房の仲間おばさんが声をかけるてくれる。
「はい、今から休憩頂きます。今日はフレンチサラダですか?」
軽く会話を交わし、七畳くらいの和室の休憩スペースに到着。
既に3,4人くらいの従業員が休憩をとっていた。
「あ、空ちゃん、お疲れさま」
「お疲れ様です」
休憩スペースにあるテレビは何かのレース中継を流していた。
「もう、ここには慣れた?」
「ん、まあ...結構楽しいですね、宿の仕事って!」
あはは...
笑みも愛想もない笑い声を私はあげる。
私はベッドのシーツを伸ばすしぐさをしながら、
「ベッドメイキングとか...ほら、綺麗に整えられた時とか、一発でシーツを三つ折りに出来たときとか、ホントに楽しい...というかなんというか?」
おばさん達も笑みも愛想もない笑いを浮かべる。
何言ってるんだろ、私は...
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