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ーサイスsideー
「何なのです、ジロジロと不躾な」
「い、いや。すまない」
やはり気になって視線が隣にいってしまう。
俺は妹を隣に先ほど襲撃してきた奴等があらかじめ用意していた馬車に乗せられ、メルシャ帝国へと移動していた。
馬車は三台用意されており、俺の馬車はヒアデル、ユリスとは分断されている。
コイツ等も考えている。もし、途中で俺が反抗しないよう俺と人質を接触させないように。しかもご丁寧にも魔力封じの手錠まで付けられてな。
手錠自体は解錠することなんて造作も無い、魔力を膨大に流せば簡単に壊れる代物だろう。
それよりも問題は隣に涼しい顔で座る妹だ。
さっきは動揺したが心はかなり平静に戻ってきている。
「その、なんだ。ちゃんと飯食ってるか?」
「?何を言っているのでありますか貴方は?変なことを聞いてくるのでありますね。まるで歳を召された乳母のように」
やはり長年離れていた妹に話し掛けるのは気まずい、俺だけが気づいていることも影響しているだろう。
「質問が悪かった、すまん」
「いいえ、気になどしなくてもよろしいのであります、結構。それに貴方は一応我が母国の客人であります故それだけ身を固くせずリラックスされてはと、」
「………あぁ」
そんなつもりは更々無い筈の方便だと分かっているのに少し信じたくなってしまうのは俺が兄だからか、それともただの馬鹿なのか。
ユウキのことも気になる。
そろそろギルドでの依頼を達成してミラと帰ってきている頃だろう。何も伝えず出て行ったから今頃どうしているだろうか。
気になることだらけだ。
「はぁ……」
「疲れておりますね、水でも飲まれますか?」
「いや、いい」
精神的に結構な疲労が溜まっていた。
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